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京都の文化財を保護する石仕事
京都には清水寺、仁和寺をはじめ十七箇所の世界文化遺産と共に無数の国宝や重要文化財があります。多くの工芸品や美術品は無論のこと、社寺建築や伝統建築など歴史的価値を持つ建造物の破損や焼失を護ることは、日本文化の伝統と意匠美を護り続けることに他ありません。
昭和24年1月に法隆寺金堂が炎上し建物とともに壁画が焼損した事件を契機に、翌25年に文化財保護法が制定され50年以上になります。特に歴史的建造物の多い京都は、文化財の保護に力を注いでいて、国及び京都府に指定・登録された文化財建造物については、専門の先生による修復工事のご指導や助成が行われています。“文化財を保護する石仕事”と言っても、具体的には「京都府の重要文化財建造物保存修理工事の入札資格」が無くてはできません。貴重な社寺や伝統建築に関わる石工事についての経験と実績がどれだけあるかが問われるためです。
文化財保護に関わる石仕事としては、文化財指定の古建築の解体修理に合わせて、土台柱がのった礎石や地覆石を据え直すなど、目に見えない箇所の工事も多くあります。またこの仕事は、基本的に在来石を活用して据え直すので、新しい石を入れることは、補足の時以外にありません。どちらかと言うと石工手間のほうが多い仕事です。
古建築の修復はまず、天気に影響なく仕事ができるように、建物全体を素屋根と白いシートで囲みます。その後で建物が解体され、調査に基づいて、在来石の位置や高さが、地面と図面に記されます。その資料を元に、石の取り解きと仮置き、遣り方工、基礎工、石の据え直し等が行われます。もし、補足の石が出た場合は在来の石種に合わせ、同じようにノミ切りや小叩きで仕上げ、適切に据え直します。
在来の束石には自然石を使ったものも多く見られますが、その石の天端のデコボコに合わせ、柱の接点が加工されていたり、大きく立派な基礎石が風化もなく、美しい形状のまま残っているなど、昔の匠の技や、石の素晴らしさに驚かされることも少なくありません。また野外に建つ「十三の塔」などの石造品の場合は、風化が進んでいるため特殊な石の保護剤を散布するなど、新しい技術や知識に触れられることも多くあります。
文化財を保護する石の仕事は見ためを変えず、また目に見えぬ場所が多い地道な作業ですが、私たちは京都の文化財を守るという、大切な役割を担う一員としての誇りを持ち、常に、確実で丁寧な仕事をすることに心がけています。
■主な石仕事
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