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心の造形。
石造美術・石彫刻について
狛犬(こまいぬ)■狛犬とは神社の参道のなどで良く見る狛犬の起源は、仏教発祥の地「インド」と言われています。古代インドで仏像を守護するためにライオン(獅子)像を置いていた慣わしが、仏教の伝来と同じように、中国から朝鮮を経て日本に伝わったようです。 狛犬は1対で「狛犬」と言うくくりになっていますが、良く見ると左右の形が違います。向かって右側が“阿”(ア)と口を大きく開けた獅子。左が“吽”(ウン)と口を閉じて頭に角を生やした狛犬です。 どちらもライオンをモチーフにした架空動物ですが、この「獅子・狛犬」のペアで「狛犬」と呼ばれています。また狛犬が阿吽型になったのは、お寺の山門に立つ仁王像にならったもので、この点が日本独自の形と言われています。 ■狛犬の居場所狛犬は基本的には厄除けや神様の守護ということで、神社の参道や拝殿前の両側に建てられていますが、平安時代の頃は神殿の中に置かれたタイプが多く、木彫りの狛犬だったようです。それが鎌倉時代の頃には、だんだんと拝殿前の参道両脇など、外に立つ全天候型の石の狛犬になり、さらに参道入口の鳥居前に立つなど、外へ外へと守備範囲を広げたと言われています。因みに社殿内は「神殿狛犬」、外にいるのは「参道狛犬」と分けられます。 現存する日本で一番古い石の狛犬は、奈良の東大寺南大門北側にいる狛犬だと言われています。鎌倉初期に宋人が石を中国から持ってきて造ったと言われています。このタイプの狛犬は人気者で、京都でも嵐山の車折神社におられますが、前述の清水さんの狛犬も、東大寺のに習い、昭和19年に造られています。 ■狛犬のブーム狛犬にも建立ブームがあったようです。特に江戸時代に徳川家康を祀った日光東照宮が造られた時に、二人の大名が狛犬を寄進したのをきっかけに、武士や町民の間でブームになり、やがて浪花(大阪)にも飛び火したようです。京都にはそのずいぶん後に浪花を経て入りますが、盛上りに欠けていたようです。 ■京都の狛犬そう言えば京都は、この工場生産型狛犬が誕生する以前から、比較的、狛犬のイメージが定型化していたかもしれません。京都中の狛犬を見てはないので偉そうなことは言えませんが、確かに関東の狛犬のような自由奔放な形は少ないようです。 また、京都には白川村と言う、有名な御影石(白川石)が採れる産地がありました。私たちの先代もいた石工の村ですが、この村(産地)と京の町が、非常に近いということも見逃せません。作り手と使い手が近いという利便性が、作業効率を高めて、一方で商品情報の共有化や画一化を促したのかもしれません。あくまで想像ですが‥ ■石工 茂右衛門(モエモン)の狛犬茂右衛門は私ども芳村の「襲名」の名前です。 茂右衛門の狛犬作品は小寺慶昭先生の名著「京都狛犬巡り」(192頁)に、詳しくご紹介いただいていますが、特に北野天満宮に多く置かれています。場所は三の鳥居の前、楼門の階段両脇、絵馬所前の参道入口、そして東門鳥居前の4箇所です。 小寺慶昭先生のご本における評価では、特に北野天満宮の絵馬所前の参道入口に置かれた、茂右衛門の狛犬に注目されて‥ 「従来の狛犬より比較的短い足だが、実に力強い。たてがみの表現が複雑になり、顔の表情も豊かになっている。(中略)茂右衛門の狛犬の躍動感は実に洗練されていて、清爽な感じを与える。この狛犬のモデルについては分かっていない。 と書かれておられます。ずいぶんと引用が長くなりましたが、京都中だけでなく、各地の狛犬を巡りご研究された、専門家の先生のお言葉なので、そのまま載させていただきました。 ■狛犬の夢狛犬は先に触れた国内産地の、量産型狛犬が普及したためか、また、それを真似た低廉な中国製品が出回っているためか、近年はあまり、新たな製造が見られないようです。私どもでも、昭和57年(1982)に香川県・金毘羅宮の狛犬や、平成18年(2006)の京都・護王神社の狛猪の他、数箇所を造っただけです。それらは、いずれも石の彫刻技術が日本一と言われる愛知県岡崎でも「現代の名工」と呼ばれた、故・成瀬昭二氏と、また一門の方と協力しあい造っております。 優れた石の彫刻品はやはり、まだ国内の石彫刻家が一番です。日本の風土に育ち、親子代々、石仕事を続けてきたり、または優れた師匠の厳しい修行を受け技術を学び(盗み?)、ホンマモンの作品を見て、ホンマモンを造ってきた実績も違います。偏見でなく、日本人の美的感覚はどうしても、DNAと一緒に日本人に強く培われるのではないでしょうか。 狛犬ブームがまたいつ来るかはわかりませんが、その時にまた「石茂狛犬」と呼べるお品を造れることを“ひとつの夢”として楽しみにしています。 茂右衛門狛犬下御霊神社
敷地神社(わら天神)北野天満宮(三の鳥居)北野天満宮(楼門階段脇)
北野天満宮(東門鳥居前)北野天満宮(絵馬所参道脇) |